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アラン諸島のイニシュモア島に上陸 [アイルランド]

アランの島が見えてきた。ずいぶん、平べったい。遠くからみると今にも水没しそうだ。日本の港は、たいてい、背後に山が控えているものだ。

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島の家がはっきりと見えるようになった。思いのほか、木が茂っているではないか。
荒くれの岩ばかりの島、土がないために海藻を海から採ってきて、土を作っていった、というはなしを聞いていたので、意外だった。

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港がみえるが、ずいぶん、のんびりして、眠っているようだ。

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アランセーターのお土産屋が見える。帰りに、あそこで買っていこう。
アラン島はアラン織りのセーターで世界中に知られている。いわゆるアランセーターは、もうブランド名のようになっている。その意味するところは、ここアラン島で作られたということではなくて、編み目がアラン島で編まれているものと同じ、ということなんだろう。
アラン島の各家で、編む模様が異なっていて、男が漁をしていて海で死んでしまって岸に打ち上げられたとき、着ていたセーターの模様で、どこのだれそれ、ということを判別したという。それだけ海で亡くなる男が多いということでもあるのだろう。

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シングという戯曲作家の作品に「海に騎(の)りゆく人々」というアラン島のことを書いたものがあるそうだが、そこには、舅も夫も息子6人ともみんな海で死んでしまった、という老婆が出てくるそうだ。死体は流れ流れてアイルランド本島のドネゴールに打ち上げられ、埋葬されるのだが、着ていたセーターや靴下をみた人が、アラン島のものではないか、ということで、遺品がアラン島に送り返される。それを見た、遺族が、編み目を調べて、これは、私が編んでやったセーターだ、だから、その死体は弟だ、と言うのである。

さて、いよいよアラン諸島のイニシュモア島に上陸した。
アイルランド本島のロサヴィルを出発して40分あまりの船旅だった。

アラン諸島の、イニシュモア島の観光の方法は、自転車を使う、馬車を使う、島が提供するミニバンに乗る、という3つがある。写真の看板のように案内が出ている。馬車は石垣の向こうで待機している。奥の建物が貸自転車屋になる。

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私たちは、ミニバンに分乗して観光ポイントへ行く。
港はキルロナンという村になる。多分アラン島で一番人が住んでいるところなんだろう。だが、銀行や郵便局は週、2日しか開いていないというし、あそこがスーパー、と言われてミニバンから眺めてもお店なんだか、普通の住居なんだか区別がつかないくらい小さい。そりゃぁ、そうだ。イニシュモア島の人口は、わずか1000人くらいなのだから。広さは、山手線の内側くらいの広さだとか。
アラン島に電気がついたのは、1974年というから、東京オリンピックがあったころは、まだランプ生活だったのだ。

1935年に作られた映画、。「Man of Aran」は、当時のアラン島の過酷な日常を描いた記録映画として知られている。You Tubeでも,ここで見ることができる。石を砕き、平地を作ったところへ、海から海藻を運び土を作っていく様子が描かれている。想像を絶する世界だ。
ミレーが描いた「晩鐘」の農夫は、土の上でお祈りをしている。土がもうそこにあるということは、なんと幸せな農夫たちなんだろう、と司馬遼太郎が書いていた。

なぜ、そんな岩ばかりの酷薄の地に住むんだろうと思うが、ケルト人がきたときには先住民族がいたらしいから、紀元前から人が住んでいたのだ。

その映画のせいなのかどうかわからないが、アラン島は世界中の人々をひきつけるらしくて年間25万人もの観光客が訪れるそうだ。

車窓からは、ゴールウェイでもみかけた石垣で囲われた牧草地が海にまで続いている。

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手前の石垣は、ツタがからんでいる。

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遠くの石垣を拡大してみると、石の間がすかすかだ。よく壊れないものだ。石と石の間に隙間があることは、意味があって、風通しをよくするそうだ。石垣を組むことは風よけだが、かといって完全に風を防ぐのではなくて、少しは風を通して逃がすほうがいいらしい。島は1枚の岩盤でできているので、それを砕いて石ころにし、それを積んでいくのだそうである。
もう何百年もこの方法で土を守ってきたのだ。

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土がなかったところに土を作っている、と聞いていたので、花を見ても、よくぞ咲いた、と声をかけたいくらいだった。

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岩の間からブラックベリーも生えて実をつけている。ベリー類はアイルランド本土でもよくみかけたが、この島でもよくみかけた。

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これは、多分、ブラックベリーの花。

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黄色い花は、日本ではみたことはないのだが、タンポポの親戚かもしれない。

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ここアラン島でもフクシアが多く咲いている。

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おや、白に黒の模様は、ホルスタインかと思ったが、あれは馬ではないか。

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自転車で島をかけめぐる人。これはこの島に似合っている。

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アラン島めぐりはまだまだ続く。


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アラン島の、岩の海岸、干潟、妖精の家、牛模様の馬 [アイルランド]

アラン諸島イニシュモア島では、ミニバンによる観光から始まった。観光といっても、岩だらけの島なので、観光ポイントがそれほどあるわけではなく、景色を堪能することが、最高の観光ではあるのだ。ミニバンの後は徒歩で、西側の断崖絶壁にある遺跡までいくことになっている。

まずは、教会跡から。
アイルランドではどこに行っても廃墟となった教会がある。ガイドブックをみると、クロムウェルの要塞まであるらしいから、17世紀のクロムウェルによる魔の手は、この最果ての地にまで侵攻していたのだ。

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海はやっぱり気持ちがいい。海藻がたくさん打ち上げられている。これを丘の上まで運び、土にしていったんだ。
だが、これだけ豊富な海藻を、どうして食糧にしてこなかったんだろう。アイルランド滞在中に海藻を一度も食べなかった。海藻を食べていれば、大飢饉のときにも、いくぶん助かったのではないかしら。
つくづく、日本人の食の豊かなバラエティに感謝する。中国や韓国でも海藻を食べるので、東南アジア沿岸では一般的に食べるのだろう。ヨーロッパではどうかしら、食べた記憶はないなぁ。

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海岸のすぐ近くまで石垣が作られて牧草地になっている。ここにいるのはやぎかしら。やぎははじめてだ。

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干潟になっているところもあった。岩ばかりの海岸をみてきて、こういう平和な景色をみるとほっとする。

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牛みたいな馬が、働いている。これは、観光用の馬車だ。ウィーンの2頭立て馬車は、御者もネクタイをしていて、馬も着飾っていたが、ここのは、農耕にでもいくようなスタイルだ。それが、ヨーロッパの果てに似合っているけど。
アラン島では、ホルスタイン模様の馬をよくみかける。足が丈夫そう。

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下の写真は、妖精の家なんだそうである。アイルランドは妖精の国だ。妖精というと、白いコスチュームのバレリーナを思い浮かべるのだが、こちら、アイルランドでは、人間のおじいさんを小さくしたようなイメージだ。何人もいる妖精の中で、レプラホーンは、赤い三角帽子をかぶっていて、仕事は靴屋だ。
こういう家をまじめに建てるアイルランド人って、なかなか奥が深い。アイルランドは信仰としては、カトリックの国なので、神様の世界だと思うのだけど。
一説によると、ケルト人がアイルランドに侵攻してきた紀元前200年ころ、現地住民を皆殺しにして、ケルトの国を作った。そのとき、現地住民を殺したのではなく、妖精として別の世界で生きていることにした、という。皆殺しにしたのでは後味が悪いだろう。この説は、なかなか説得力がある。
が、一般的には、アイルランドにキリスト教が入ってくる紀元4世紀までにケルト人が信仰していた神々の生き残りと言われている。

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石垣から突然、馬がご挨拶。びっくりするじゃ~な~い~。

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岩ばかりの中で草を求めて頑張る牛。白い仮面をかぶり、白い靴をはいている。

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下の写真の家は、アラン島らしいたたずまい、ということになっているキャフェ。だけど、草ぶきのこういう家はここだけだった。屋根の草を集めるのも、こう岩ばかりだと、大変だろうね。

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さて、ここで、ミニバンとはお別れ。後は自分の足で歩いて、西の断崖絶壁までいく。1kmほどあるのかな。
歩き始めてみて、本当にここが岩ばかりであることを改めて感じる。
アランの映画では、岩のくぼんだところにたまっている土を集めて畑を作っていた。だけど、畑といってもほんの少し掘れば岩にぶちあたる。アランの農夫が鍬をおろすと、カーンという石に金属があたった音がするそうだ。

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観光用の道は石垣に囲まれて整備されている。

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道はうねうねと続く。

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こういう石垣をあちこちで見ながら進む。

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あのてっぺんまで行けば、なにか見えるのだろうか。峠みたいなのが見える。

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まだまだ・・・

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なかなか峠まで行き着かない。こういうときは、後ろを振り返る。

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峠を越えてみえたのは、分厚い石垣だった。ドゥーン・エンガスと呼ばれる紀元前1000年ころの砦だ。この石垣が3重に重なり、断崖絶壁を背景とする半円形の空間を作っている。要塞としては、断崖絶壁の背後を衝かれる心配がなく、守りにはいいかもしれない。
しかし、何のためにつくられたのかは、わかっていないそうである。宗教儀式のため、という説もあるらしい。

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この石垣を回り込んでいくと・・・


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アラン諸島イニシュモア島のドゥーン・エンガス [アイルランド]

 石の砦をくぐりぬけると、視界が開けていた。 ここがガイドブックにもあるドゥーン・エンガスの断崖絶壁なのだ。
だが、地面の向こうになにがあるのか、一瞬にはわからない。みんなテンションが上がっている感じ。

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地面は、硬い岩盤で、できておりさらにその上に舞台がのっかっている感じだ。この舞台の上で、祭祀がとりおこなわれたのではないか、という説もある。とすると、この舞台は人間が作ったのだろうか。それにしては、硬くてびくともしない。

断崖絶壁の下をみるために、腹這いになっている。特に柵があるわけでもない。

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私、Adaは足がすくんでしまって、舞台の上にもあがれないし、海面から90mあるという絶壁にはとうとう近寄れなかった。

舞台を中心にまわりをがっしりした石垣がぐるっとある。舞台の背景は空。おそるおそる、端っこの石垣から首を伸ばしてみた。すると、こちらよりはかなり低い位置になるが、断崖絶壁が見えた。ヒェ~。

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突然、犬が断崖絶壁の方向に走っていった。犬が落ちてしまうと思った瞬間に、犬は立ち止まり、しっぽを巻いて、後ろを向いて、走り去った。だれかの飼い犬だと思うけど、カメラを構えることもできないほど硬直してしまった。犬は本能的に危険を察知できるのだろうか。

日本だったらこういう観光名所は厳重に柵をするだろうけれど、こちらは、あくまでも自己責任だ。

断崖絶壁の後ろは、下の写真のように石垣が3重にぐるりと取り囲んでいる。

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来た道とは、違う道を下りていくと、この砦を囲んでいる石垣が崩れている。あるいは修復しようとしているのかもしれない。

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その向こうの石垣もくずれている。イヤ、岩盤が顔を出しているだけかもしれない。
石垣も、もとは岩盤だったものを歳月をかけて、砕いて石にし、積み上げていったのだから、どちらでも同じ。
この石の多さには圧倒される。

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また元の道に戻り、引き返す。

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えんえんと道は続く。まるで万里の長城のようだ。

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どこをみても石ころだらけの野原では牛が放牧されている。石の上で草を探すの、本当にご苦労様。

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ブラックベリーは荒地でも元気。

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パンダみたいな牛がいた。牛みたいな馬がいたり、仮面をかぶった牛がいたり、ここは、牛馬が変装している。

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村まで下りてきた。村の石垣の上にはフクシアが生け垣として植えられていた。私Ada(エイダ)のフクシアの高級なイメージとは全く異なり、いたって健康的、庶民的だ。フクシアってこんなふうに植えるものなのね。

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歩いたあとは、昼食。3時近くなっていたので、おなかがすいていた。
ロブスターだ!
ボストンでもおいしいロブスターを食べたことがあるけど、そういえば、大西洋をはさんで、アイルランドとボストンは対岸になる。食べ物でもつながっているのだ。

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夕刻5時の船で、アイルランド本土に帰る予定だが、それまでの1時間ほど、アランセーターを物色してまわった。2枚ゲット。

フェリー出港の時間だ。すかすかの石垣に別れを告げ、

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島のどこにでもあったブラックベリーにも別れを告げ、

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船に乗った。
船からみるイニシュモア島は岩ばかりだった。石垣を作って土を守ろうとしているが、土があまり定着していないのが、みてとれる。

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船はまたロサヴィル港に到着し、私たちは、また、肝っ玉母さんのバスでゴールウェイに戻った。もう夕刻7時近かった。

さて、本日の夕食は、ツアーには含まれていなくて、各自の自由になっている。ツアーで、夕飯が含まれないときは、うれしい。おなかの調子と相談しながらホテルの自室で胃を休めたり、あるいは、おいしいものを食べにいったり、好き勝手にできる。

で、本日は、生ガキを食べに行った。ここ、ゴールウェイでは、オイスターフェスティバルの真っ最中。とはいっても、どこでオイスターフェスティバルやってるの、という感じで、派手派手しくやっているわけではない。なので、ガイドさんに案内してもらった。

まずは、いつもどおり、ギネス。今度はクリーミーな感じが撮れた。

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旅先で、生もの、それもカキは、ちょっと恐ろしくもあったが、名物のカキだし、オイスターフェスティバルと銘打っているし、なによりも、何人かでガイドさんと一緒なので、エイヤー、と食べた。

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