ブレンナー峠を越えてイタリアへ [チロル・ドロミテ]
オーストリーとイタリアの国境近くにある村、オーバーグルグルでの2日目の朝、起きるなり空模様を見る。
朝焼けなら散歩なのだが、そこまではいかない。でもホーエムートの山が見えているからお天気はよさそう。
しかし、朝の着替えをしているうちにも、空はどんどんと変容を遂げ、雲が出てくる。
朝の光が当たり始めたところには雲が帯状に伸びている。
これはこれできれいだからよしとしよう。
山とは反対方向の川の下流方向にも雲が伸びている。
下をのぞくと、ツアー仲間が散歩している姿が見えた。
で、朝ご飯前に、付近をひとまわりすることにした。
道の先に見えるオーバーグルグルの村にも低い雲がおりている。
山はもう雲にかくれている。山の天気は本当に変わりやすい。
ま、青空が見えているから昨日よりははるかにいい。
山の朝ご飯はいたって簡素だ。
ヨーグルトとパンと紅茶。
食事をゆっくりと楽しんで今日は朝9時にイタリアへ向けて出発だ。
部屋からの最後の眺めは青空がひろがっている。
1900mのオーバーグルグルから降りていく。
ん???
降りるのは変だ。これからイタリアへの峠を越えるはずではないの?
オーバーグルグルからこれから行く予定のボルツァーノへは、直線距離で50kmほど。
事前に地図で確かめていたのだが、アルプスを越える道路があるので、そこを通るとばかり思っていたのだ。
山道からの景色はさぞ素晴らしいに違いないと楽しみにしていた。
だが、なんとこれからインスブルックへ戻って、それからブレンナー峠を越えてイタリアに入るとのこと。
ガ~~ン!
険しい山道を避けて、コの字型に遠回りしていくというではないか。
どうりで、車窓からの景色は、来るときにみたものだ。
かくして、バスはエッツタールをどんどん下って行った。
インスブルックの標高は574m、オーバーグルグルから1000m以上も下ってきた。
バスは、インスブルックに繋がる大動脈の道路に入り、快適に跳ばしていく。
インスブルックの町が見えてきた。
あら、スキーのジャンプ台が見える、あの近くのホテルに3日前に泊まったんだわ。
インスブルックも給油しただけで、通り過ぎる。
ジャンプ台と山を合わせて見るのは、なんだか新鮮。
インスブルックらしい景色を見ることができて満足だ。
さて、バスはブレンナー峠への道をまっしぐら。
バスの後方に座席をとったので、カメラ遊びにはちょうどいい。
ヴィップタール(ヴィップ渓谷)を上流にさかのぼり、オーストリーが遠ざかる。
アルプスからは、・・・タールという渓谷が何本か出ているが、タールからタールへは、やはり超えるのが難しいのだろう。
オーバーグルグルのあるエッツタールからは、やはりいったん平地に出て、ヴィップタールに入り込まねばならないのだ。
いかにもヨーロッパという風景の中を走る。
もともとは山林だったところを牧草地に変えていったことがわかる風景だ。
日当たりの悪い斜面は、山林のままだ。
どこまでも人の手が入っている。
いよいよ山が険しくなり、そろそろ峠かもしれない、とそわそわする。
おーー、電車が走っている。
後ろに遠ざかる電車。
行く方向は深い山。
あっというまにトンネルに入り、トンネルから出た。
もしかして、ブレンナー峠を越えたのかも。
ブレンナー峠に新しいトンネルを作るというはなしは聞いたけど、今、トンネルはあるのだろうか。
追加:
Googleの地図でみてみると、国境を越えてイタリア側に入ってすぐに1kmもないほどのトンネルがあることがわかった。
トンネルと並行して、鉄道のブランネロ駅がある。
写真とくらべてみると、地図と一致していた
だからこの写真はブランネロ駅を通過中ということがわかった。
国境は、トンネル入り口手前だった。
なんだかよくわからないうちに、イタリアに入ったようだ。
日本の中央高速道路と似た風景もあるが、曲がりくねっていないので、速度は時速100kmは下らないと思う。
アルプスの北と南とをつなぐ大動脈として、交通量の多い、しかもトラックの多いところとして聞いていたが、中央高速よりは、はるかに心地よく走れそう。
同じような田園風景でも、どことなくイタリアらしく明るい感じがする。
モーツアルトもブレンナー峠を3回、越えて旅をしている。
ゲーテの詩に「君よ知るや南の国へ」で歌われている旅芸人の子供のミニヨンも、きっとブレンナー峠を越えたに違いない。
イタリアの映画で「道」という映画があった。
見たことはなかったと思うけど、オ~ジェルソーミナ~~と歌う歌はよく聴いたものだ。
そこに出てくる旅芸人も荷台に乗って旅をしていた。
ジェルソミーナはブレンナー峠は越えなかったと思うが、なぜか、ミニヨンのイメージと重なってしまって、ブレンナー峠というと、旅芸人が通る道を連想するようになった。
ザルツブルグからやってきたモーツアルトもブレンナー峠を越えて訪問するイタリアに南国の明るいイメージを自らの能力発揮の場として重ねていたのだろう。
そっか、モーツアルトも旅芸人だったのか。
トンネルを抜けると雪国だった、というのとは反対だけど、峠を越えると明るい陽光がさしていた、というのは、アルプスの北からやってくる人たちのすべての人が感じることではないだろうか。
ちょっと前までは、はなしが逆で、イタリアから大量の労働者がドイツに入っていったが、やはりこのブレンナー峠を越えていったのだろう。
アルプスを北に超えて働きに行くというはなしは、富岡製紙工場に野麦峠を越えていった女工哀史を思い出す。あんまり明るいイメージにはならない。
ブレンナー峠は北から越えるのがいい。
おだやかで時が眠っているような田園が広がる。
地図を見てみましたけど、山から峠を越える道は、イタリアに入ってからの山道が普通の乗用車がやっと対向できる程度の細い道で、観光バスは無理っぽいですね。
でも、グーグルアースで見る限り、本当に素晴らしい景色のようです。残念でしたね。
by めぎ (2014-10-06 20:18)