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深い山奥の森に眠るグレンダーロッホ遺跡 [アイルランド]

アボカから30分くらいバスで走ったところに、グレンダー・ロッホという有名な観光地がある。そこに行くために、山深くバスは坂を登っていく。木の生い茂った深い森の山道を走ることは、アイルランドではあまりなかったことだ。雨が降っているし、霧も出てきそうなお天気だ。こういうときは妖精でもあらわれるかな。

グレンダーロッホとは、ゲール語で「2つの湖に囲まれた谷」という意味だそうだ。その名前のとおり、ローアーレイクとアッパーレイクという湖があり(なぁんだ、上と下ではないか)、景色もいいらしい。6世紀に聖ケヴィンがこの地で修行をしたのが始まりで、アイルランドの初期のキリスト教の聖地として、発展してきたそうだ。9世紀にはヨーロッパ各地から僧や学者が集まってきたという。山が深いために、ヴァイキングの襲来でも破壊をまぬがれたが、12世紀にノルマン人が入ってきて、さらには、イギリス人もやってきて、衰退していった。

つまり、ここも廃墟だ。

もう数えきれないほどの廃墟を旅行中にみてきた。廃墟が観光地になるということは、日本ではどこだろう。古い建築物の法隆寺や東大寺、金閣寺などは、きれいに修復されている。破壊されたままになっているところってあったかしら。古い城壁が残っているのもあるけど、廃墟という感じではなく、形を整えられている。

石の文化は、根強く後に残るものなのね。西洋の人たちの粘り強さや過去を忘れない姿勢がなんとなく理解できる。2000年に渡るエルサレムの問題も、石の文化の生み出した気質が底にあるように思う。

だが、廃墟とはいえ、紀元前2世紀にアイルランドにやってきたケルト人が築いた遺産だ。先住民族ではなく、16世紀以降にやってきたイギリスが築いたものでもなく、現在のアイルランド人の先祖が築いたものなので、とても大切なのだ、ということが伝わってくる。

逆に、アイルランドの人たちは、紀元前2世紀より前の祖先の遺物を持っていない。ケルト人は、かつて、ヨーロッパに広く住んでいたが、追われ追われて、西の果てのアイルランドまでやってきたのだ。だから、アイルランドのケルト人国家としての遺産は紀元前2世紀以降にある。こういう感覚は日本人には、多分理解できていないと思う。日本では5000年前の遺物は、私たち日本人の祖先が造ったもの、というのは当たり前なのだから。日本の中のものは、日本の歴史の中にある。

グレンダーロッホの初期教会群遺跡の示す歴史的遺産としての価値はともかく、グレンダーロッホの魅力は、周辺の自然環境の素晴らしさにもあるのではないかしら。お天気が悪くて歩き回らなかったけど、ハイキングコースが整備されている。

さて、入口は、石の門が2つあるところだ。

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上の写真、映画の1シーンのよう。美男美女が、雨のそぼ降る中、連れ立って門を出ていく。

石の門をくぐって、しばらく歩くと、お墓がある。いったい、なにがあるというのヨ。

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新しいお墓もあるようだが、石が傾いてしまっているお墓が乱立している。雲が低くたれこめ、お化けでも出てきそうな雰囲気だ。アイルランドではこういう雰囲気のときに、妖精が出るということになるのだろう。妖精とはつまるところ、お化けですね。

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プラハのユダヤ人墓地を思い出す光景だ。

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12世紀に建てられた大聖堂のあったところ。

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1000年前の石の組み方がよくわかる。

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ケルト十字のお墓。

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円筒は10世紀のもので、高さ30m、1mの厚さで石を積み重ねている。1000年もよく残ったものだ。

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聖ケヴィンの十字架に腕をまわして手が届けば願いがかなうのですって。

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立派なお墓もある。

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倒れた墓石の間をくぐりぬけて歩く。

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聖ケヴィンの教会は、屋根まで石造りのため、よく残っている。

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屋根の石をどのように積み上げていったのか不思議だ。中をのぞいてみたのだが、暗くてさっぱり見えなかった。本当に小さな教会だ。1000年以上もそのままの形で残っているのは、アイルランドではめずらしいことだ。

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あまりの雨で、周囲をほとんど歩かないまま、戻ってしまったのは、ちょっと残念でもあった。このほかに、いくつかの初期教会があるらしい。それらを見ながら、湖をまわる、というのが、ダブリンの人たちの楽しみ方のようだ。

入ってきた石の門のあたりには、めずらしくお土産屋さんの露店が出ていた。雨で気の毒だったが、店をみないで、バスに駆け込むことにした。今までアイルランドの観光地をまわってきたが、露店のお土産やさんは、ほとんど見なかった。いつも霧雨が降っているようなお天気なので、ある程度の屋根がないと、商品が傷むだろうし、観光客が多く来るところは、ちゃんと家を構えていた。

バスからみた景色。幽玄という言葉は、アイルランドにも似合いそうだ。

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遠くに、さきほどの円筒が雨にかすんで見えた。

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