キルケニーの五つ星ホテル [アイルランド]
キルケニー郊外のホテルに着いたとき、雨はもう傘なしではいられないほどに降っていた。夕焼けも期待できず、あきらめムードだったが、ホテルをおおうツタが紅葉しかけている風情をみたとき、なにかおもしろいものがあるかもしれない、とまたまた好奇心がわいてきた。
あとで調べてみると、このホテルはなんと5つ星だった。ヒエ~、ぜいたく~。
ホテルロビーの真ん中にある暖炉には、本物の火が燃えていた。
ここは美術館か、と見紛うような彫像。
ピアノの上には、こぼれんばかりの白いユリを入れた花瓶が置かれている。
窓から外をみると、ツタが窓飾りのようにからまっている。
ロビーに続くフロアを探検すると、ゆっくりとお茶でも飲んでいたいような空間もある。
壁には、こんな感じの絵がたくさん飾ってある。
こういう絵があるからには、このホテルはもしや、古城を改修したホテルかも、と思ったが、そうでもないみたい。アイルランドには古城ホテルがあって、一味違う雰囲気があるらしい。
中でも目を引くのは、この絵。チェロを弾いている人を描いている。こういう題材の絵は珍しい。
もっと珍しい絵がある。バイオリンを弾くおじいさんを描いている。バイオリンの弓の持ち方は、バロック風に短く持っている。どうしてこんなに地味な絵を飾っているのかしら。
アイルランドはアイリッシュダンスのときに、バイオリンを奏でるが、その弾き方が、独特だ。あまりビブラートをかけないし、歯切れのいいテンポでたたみかけるように弾く。そんなバイオリンの曲を弾いているような絵だ。
しかし、アイルランドで踊られるダンスや、その伴奏のバイオリン曲は、イギリスの監視を逃れて受け継がれてきたもので、庶民的なもののように思う。こういう5つ星ホテルには似合わない題材ではないかしら。あるいは、アイルランドが誇る画家の絵だったりするのかしら。
バイオリンを弾くおばあさんの絵もあった。遠い昔をなつかしんでいるような雰囲気。バイオリンを弾いている絵は、たまにみかけるけど、たいてい、男性だ。最近の絵では若い美人のバイオリニストだったりする。この年代でバイオリンを弾くということは、日本ではとても珍しいことだけど、アイルランドではごく普通であることがうかがえる。
ホテルの部屋に入ってまた驚いたのが、テレビ。テレビが点いていて、WELCOM Ada Byron、てな感じでAdaの名前入りの歓迎メッセージが映っている。ということは、各部屋ごとに別のメッセージを表示するシステムを備えているのだ。こういうことをするのは、やっぱり古城ホテルではありませんね。お忍びでホテルに来たけど、身元が割れてしまっている、みたいなことは、古城ホテルではやりませんね、きっと。これは、ちょっとビジネスライクなサービスだ。
そうなのだ、ここはコンベンションホールや会議室も備わっていて、日本でいうと、京都の超一流ホテルで、TPPを考えるシンポジウムみたいな感じのビジネスセレモニーが行われる場所でもあるようだ。首都ダブリンからそれほど遠くもなく、歴史的な遺跡などの観光地があり、国際会議をやるのにうってつけの場所だ。
雨が降っていたが、庭もひとまわりしてみることにした。
芝生のあちこちに、かわいいきのこが生えている。こんなのみたことない。
これは西洋の童話に描かれているようなきのこ。
つくしみたいだけど、きのこ。
傘をさしているようなきのこ。
シクラメンも咲いている。
白いシクラメンだ。
雨の中、夕刻の光も薄くなって、カメラは難しくなってしまったので、散歩はおしまい。
夕飯がおいしいので、雨でもうきうき気分だ。コース料理は選べるのだが、いつも同じパターンになっていく。スープはいつもはずれがなく、おいしい。ほかのチョイスとしてはサラダとか、カモ肉春巻きとかあった。
ビールはギネス。
メインディッシュもいつも魚。ポテトの上にますのソテーがのっかっている。緑は豆苗みたいだった。他のチョイスとしては、チキンとか牛。
デザートはたいていこってりしている。これはアップルクランブルかな。いつも残さず食べる。
さて、一夜明けて、朝のロビーは、ちょっとさっぱりしたイメージに変わった。が、やっぱり豪勢だわ。
ドイツのローテンブルグ城壁内のど真ん中にある小さなホテルに泊まった時(記事はここ)、2階の部屋にいくエレベーターもエスカレーターもなくて、もちろん、ポーターさんなどいるはずもなく、四苦八苦してスーツケースを運んだことをなつかしく思い出す。あのホテルは10部屋くらいしかなかった。イタリアのクレモナのホテルもそうだった。そういう小さなホテルは、密やかなプライベートに浸れるゆったりとした味があったように思う。
ここは豪勢な5つ星ホテルだけど、Adaのような背の低い身の丈には余るところがある。
下の写真はおまけ。ホテルロビーの胡蝶蘭がきれいだったので、撮ったのだがおおぶれにぶれていて、また別のおもしろみが出ていたように思った。でも写真としてはやっぱりダメなのね、きっと。タムロンのレンズは万能なのが旅行には重宝するのだけど、やっぱり重いので、よほど、しっかりカメラをかまえないとぼけぼけになってしまう。走るバスから撮るときなどはシャッター優先で撮るのだが、そうなると画質が問題になってくる。カメラは本当に難しい。
おおぶれの写真が他にも山ほどあるのだけど、なんだが思いがけない味が出ているように感じられて捨てられない。
今、断捨離実行中なんだけど、トホホ。
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