雨と霧のホーエムート展望台 [チロル・ドロミテ]
朝、起きるとすぐに空をながめてが~っかり。
山はすっぽりと雲に覆われていて、雨が降る寸前だった。
それでも、オーバーグルグルのロープウェイ乗り場まで、バスで行き、そこからロープウェイに乗った。
行先は、標高2670mのホーエムート展望台。
まわりの3000m級の山々が一望のもと、見渡せるというところだ。
だが、ロープウェイが少し上がっただけで、あたりは、霧に包まれていく。
間もなく、な~んにも見えなくなってしまった。
ロープウェイが到着したというが、どこに着いたのかもさっぱりわからない。
多分、分厚い雨雲の真中に到着したのだ。
ロープウェイにつながっている山小屋に入る。
屋内では、まわりが見えたので、少しほっとする。
ムートンの座布団に、木の椅子、木の壁が素晴らしくて、ちょっと癒される。
山小屋のテラスもテーブルや椅子がしっかりした木でできていて素晴らしい。
外が見えるように、透明な屋根までついているではないか。
だが、外はなんにも見えない。
この山小屋はスキー客向けの造りになっているようだ。
オーバーグルグルは、上質の雪でも有名らしい。
雪山を見ながら青空の中で滑るとどんなにか気持ちいいだろう。
いや、青空だったらハイキングでも気持ちいい。
山小屋の居心地の良さにすっかりくつろいでいたのだが、ハイキングの予定がある。
こんなお天気でハイキングだなんて、旅程に拘束されている私たちくらいだ。
意を決して、5kmの山下りに向かおう。
雨は降ったり止んだり。
既にかなりの降水があったとみえて、草やお花はびしょびしょ。
水滴でぐっしょりとなったお花畑を見ることなんて、そうないんじゃないの~。
さすがのデビルズクローも、水滴と戦うために爪を曲げてしまっている。
こちらのデビルズクローは水滴を持ち上げている。
こういう見慣れない姿もいいもんだ。
小さいということは、雨からも身を守るようで、平常の姿で頑張っている。
これはナンダロ~。
センペルビブム(ベンケイソウ科 クモノスバンダイソウ属)かなぁ。
このような多肉質の植物は雨でもへいちゃらのようだ。
赤いので目だつせいか、あちこちに咲いている。
ここにも。
岩に張り付いているのをよく見かける。
これは似ているけど、新種だわ。初めてお目にかかる。
名前はわからない。
ウメバチソウかなぁ。
白い花の群落。
近づいてみると、マンテマだった。
シロバナマンテマ ナデシコ科 マンテマ属 かなぁ。
もっと近づいてみると、ぐしょぬれで、頑張っていた。
あら、これは勿忘草。
サギゴケみたい。小さくてかわいい花だ。
近づいてみると、やっぱりびしょびしょだった。
サギゴケだったら地面に張り付いているはずだけど、ナンダロウ。
ポテンティラ・アウレア(バラ科)かなぁ。
下を向いて、生殖器官を雨から保護している。なんてかしこい花なんだ。
この花ね、元気なのよ。
リナントゥス・グラキアリス(ゴマノハグサ科:花弁唇形)
花の終わった後の抜け殻が、すっぽりと水滴に包まれていて、異様な美しさを発揮していた。
山は花盛り。
雨で雄大な景色はまったくみえないのだが、花の一番輝いている季節に訪れたのは、幸いだった。
だいたい、花は、晴天より曇天のほうが色写りがいいものだ。
視界は数十メートル。
遠くに見えるのは、キルシウム・スピノシシムヌ(キク科)かな。
雨のお花畑にマーモットがいた [チロル・ドロミテ]
2563mのホーエムート展望台から1930mのオーバーグルグルの村まで下山することになっている。
といってもまわりは霧でなにも見えないので、近くのお花を見ながらゆっくり歩く。
遠くにアルペンローゼが咲いている。
歩いているのは、我がグループだけ。
カメラを抱えて、花を撮りながら歩いているので、いつも最後尾近い。
先を行っている人たちの姿は霧に消えていく。
それでも、大自然の空気を吸っているすがすがしさを感じる。
今度は、青い花の群落が見える。
フウロソウだ。
ゲラニウム・シルヴァティクム[Geranium sylvaticum](フウロソウ科:花弁5){ゼラニウム}
そうか、ゼラニウムの仲間なんだ。
ダクティロザリ・マクラタ[Dactylorhiza maculata](ラン科:花弁唇形3)ウズラバハクサンチドリかな。
ハクサンチドリってこういうお花なんだ。
これはナンダロー。
前を行く人たちが立ち止まってなにかを見ている。
なんだなんだ。
オ~!!
マーモットが3匹、遊んでいる。
ネズミ目リス科。
ヨーロッパアルプスには猛獣はいないのかしら。クマとか、オオカミとか。
どこにでもあるような黄色いお花だけど、こういうのは案外、名前を調べるのは難しい。オテアゲ。
青い花はなんだろう。
勿忘草かな、遠くてわからない。
お天気が悪くても、こういう大自然の妙を楽しめるのはシアワセ。
元気な花、リナントゥス・グラキアリス(ゴマノハグサ科)
その群落。
お花畑が素晴らしい。
雨にもかかわらず、カメラを構えていたら、レンズフィルターに雨滴がついてしまった。
白いお花畑。
近づいてみると、
ワタスゲが雨に打たれた姿かしら。
バルトシア・アルピナ[Bartsia alpina](ゴマノハグサ科:花弁唇形){シオガマギク属}かなぁ?
川が見えてきた。
雨がひどくなって、カメラはもう限界かも・・・・
と思ったとき、少し先に、ぼんやりと小屋が見えてきた。
昼食をとることになっている山小屋に到着したのだ。
霧でまわりがよくみえなくて、突然、到着した、という感じ。
なにはともあれ、お昼ご飯で休憩になるのはうれしい。
昨日の山小屋での昼食と同じ、ダンプリングスープを注文した。
お団子は1コで、スープがた~っぷり。
屋内が温かいので、カメラのレンズが、曇ってしまったけど。
チロルの馬と仲良くなった [チロル・ドロミテ]
山小屋で昼食を食べると、また元気が出てきた。
雨も止んで、少し明るくなったみたい。
犬連れのハイカーたちは、山小屋から出て歩き始めた。
山小屋の前に何頭かの馬が草を食んでいる。
子供たちがさわってもおとなしくしている。
我がグループもみんな馬と遊び始めた。
たてがみが白くて品のある顔をした馬だ。
放牧用の柵があるわけでもなくお行儀よく、人間の相手をしている。
さて、出発だ。
ここまで400mほど下ってきたが、さらに300m下っていく。
まだここの標高は2000m以上だ。
山小屋に別れを告げる。
標高が下がるにつれ明るくなり、山小屋にいた人たちが、外に出て散歩している。
あら、自転車でここまでやってきたのかしら。
下を向いている小さなピンクの花。初顔だわ。名前はわからない。
ここのアルペンローゼは、まだ咲いている。
私たちも歩き始めた。
先頭は、現地の山のガイドさん、次が名添乗員の大藪さん。
大藪さんは、究極の晴れ男とも言われていたそうだ。
少し、ハイキングらしい雰囲気が出てきた。
赤い花はアルペンローゼ。
ちょっと険しい下りもある。
はるか遠くにオーバーグルグルの村がちらりとみえる。あと少し。
雨はまだふったり止んだりしているが、視界がよくなってきた。
斜面のアルペンローゼをめでる余裕も出てきた。
先頭のハイキングガイドさんも傘をさす余裕がでてきたのだろう。
今までは両手をあけて、なにかあったときに備えて注意深くしていたのだけど。
2番目を行く、究極の晴れ男は、寒い雨の中、とうとう7分丈のズボンで通した。
脛が出ているから、靴下はびしょ濡れにちがいない。
このあたりには詳しい方なんだけど、まさか、こんなお天気になるなんて思ってもいなかったよう。
私、Adaも最後まで、カメラを手に持ったままで歩きとおした。
ロートモースの滝に到着。
ここからは、オーバーグルグルまで近いとのこと。
この滝は、ロートモース氷河から流れてきている。
晴れていれば、ロートモース氷河を眺めながら歩いていたはずなのだ。
滝は、そのほかにもいくつもあった。
多分、氷河や雪が解けだす最盛期なのだ。
こちらにも滝というか、川が何本か流れている。
リグスティクム・ムテルリナ[Ligusticum mutellina](セリ科:花弁5)マルバトウキ属かなぁ。
赤いセリ科の花としよう。
フィテウマ・オバトゥム[Phyteuma ovatum](キキョウ科:花弁多)かしら?
ハエがとまってしまって、いい気分じゃないので、トリミングしたら、巨大な花になってしまったけど、可愛い花だった。
山の上のほうでも咲いていた、リナントゥス・グラキアリス(ゴマノハグサ科)。
カンパニュラも元気。
村が近くなるとやっぱりセリ科の植物が多くなる。
オーバグルグルの村がもうすぐそこ。