強制退去処分のライオン夫婦 [ケニア・タンザニア]
タンザニアはンゴロンゴロ国立公園のクレーターの中、ここには、いくつかの観光客のためのトイレが整備されている。とても清潔だ。
そのうちのひとつで、トイレ休憩とすることになっていた。
池の向こうにある建物が、トイレ。
池には、カバが棲んでいる。水の上に鼻だけ出している。
そのトイレの裏側にライオン夫婦が寝そべっているので、トイレが使えない、という珍事が発生した。
しかし、人間の生理的な欲求をおさえるのは、難しいものだ。困ったことになってしまった。トイレの前に停まっている車は、急を要する方のために、なんとかならないか、と右往左往している。
ライオンはここにいた。日陰なので、気持ちいいのだ。
もう、公園を管理しているレンジャーの四駆がかけつけていて、オスライオンが、立ち上がっていた。ライオンに退去命令が出されて強制執行になった様子。
レンジャーの四駆に追い立てられて、まず、オスライオンが出てきた。
「どっちへいけというのだ」とライオン。
いえいえ、こっちじゃないの、あっちあっち。
メスライオンも出てきた模様。
追い立てる四駆。
まだまだ遠くまで退去していただかないと、安心してトイレに入れませぬ。
四駆はこんな坂でもへいちゃらだ。
かわいそうなライオン夫婦。
「どこまで行けってんだぁ」
まだまだ遠くまで行ってください。
「まだ四駆、追いかけてくるかなぁ」
「やっと四駆が停まったようだよ~」
百獣の王は、今にも泣きそう。だれにだって、泣きたくなることはあるものです。それを乗り越えて強くなるのです。
「ここまで来れば、もう怒られないかなぁ」
クレーターの王者、ライオンもレンジャーには勝てませぬ。
ライオンの後姿は、寂しさと、悔しさにあふれていました。
「もともと、われわれライオンの棲みかだった野原を、なぜ、追い出されなきゃいけないんだ」
「これから、どこに行こうか、この辺には日陰がないし・・」
ライオン夫婦は途方にくれるのでありました。
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